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瞑想で大切な仏教心理学の3ステップ

瞑想は精神をリラックさせるだけでなく、心を完成させていく(悟り、解脱を目指す)作業であることを別記事でご紹介させていただきました。その過程で、心の作用を瞑想によって直接体験し理解する必要があります。

今回は、瞑想で大切な仏教心理学の3ステップをお話しさせていただきたいと思います。

 

 

その1 仏教心理学の基礎

瞑想は、バラモン教を中心としたウパニシャッド哲学の時代から、ヨーガ行の中心で展開されておりました。しかし時代を経て仏教(特にチベット密教)にも取り入れられ、更なる発展を遂げていきました。

瞑想を通して、心の機能や、ボディ(エネルギー的なボディを指します)の機能を直接体験するに当たって、仏教の心理学と合わせて理解したほうが、より正確かつ深く理解できるということがあります。ですので、ここで一旦、簡単な仏教心理学の基礎をお話しさせていただけたらと思います。

これは現代で言う認知心理学とも関わる事とおもわれますが、テーラワーダ仏教(小乗仏教上座部仏教)の聖典アビダルマ・コーシャの時代から、心の働きは大きく分けて5種類あると言われております。

一つ目は「対象物」。これは心の外にあるものですが、一応これも働きの中に含まれます。アビダルマでは、「色や、色蘊」などと表記されます。

二つ目は「感受作用」。これはその名の通り、外にある対象物を「心」が感受するための機能です。アビダルマでは「受、受蘊」と表記されます。

三つ目は「印象作用」。これは解釈が難しく、私たちが思っている「印象」とは少し意味合いが異なります。これを別名で「形成作用」と訳されております。「行、行蘊」などと表記されます。

四つ目は「表象作用」。これはイメージと言った方が分かりやすいかもしれません。映像のイメージ、音のイメージ・・・これらは記憶とも密接に結びついております。アビダルマでは、「想、想蘊」などと表記されます。

五つ目は「識別作用」。この段階にきて、あるものを「あ、これはリンゴだ。」「あ、このこはかわいい。」などと、識別します。アビダルマでは「識、識蘊」などと表記されます。

これら五つを総称して、仏教哲学では「五蘊(ごうん)」と呼んでおります。

 

・外界の対象物
・感受作用
・印象作用
・表象作用
・識別作用

 

その2 五蘊フレームワークを使い、自分の内面を分析する。

例えば、あなたが新宿駅を歩いているとします。目の前を、とてもかわいい女の子が通ったとして、そのこを「あ、かわいい!」と思うまでのプロセスを、五蘊フレームワークを使って分析してみたいと思います。目の前を歩いているかわいい女の子というのは、上の分類で言えば「外界の対象物」です。この場合、物ではありませんが、物質の次元ということでひとくくりにしております。この「かわいい女の子」を、心は感受します。もっと正確に言うと、視覚的情報、嗅覚・・・等、あなたの五感の感覚器官を通して、あなたの心は外界の女の子の情報をキャッチするのです。情報をキャッチした瞬間に、心には、その女の子に関する「印象」というものが湧き起ります。この印象とは、一般的に言う印象とは若干性格が異なるのですが、ここについては後程詳しく解説できたらと思います。その次に、イメージ作用です。過去の記憶を含めて、心はその女の子に関する情報を一瞬で探し出します。「かわいい。Aというアイドルに似てる。気が強そう。・・・」などのイメージが頭の中に形成されます。それらを心は識別します。識別作用です。「あ、あのこかわいい。Aというアイドルに似てる。気が強そう!」と、心は理解します。この段階で初めて、あなたの心は女の子について認識し把握することができるのです。

 

その3 印象を分析する。

現代の心理学では、この印象作用、形成作用である「行蘊」は、対応する概念が見当たりません。

サーンキャ哲学や、仏教心理学で言われる印象とは、一般的に言われている印象とは異なります。一般的には、「あの人は怒りっぽい印象を受けた。」などといいますが、これは怒りっぽいというイメージや、識別なのです。ここでいう印象は、もう少し性格が異なります。

印象は別名「形成作用」と言われています。心を海にたとえてみましょう。海に石を投げ込んだとします。石は外界の対象物。これを海に投げ込むと、海は石をキャッチします(感受作用)。
海に石が入ると、さまざまな「波」や「水の流れ」がつくられます。これらの波や水の流れは反応として自動的に作られるもので、波や水流の形が「石に対するイメージ」なのです。したがって、何かが入り込むと自動的にこれらが形作られる「エネルギー保存の法則のような物」を形成作用。あるいは石と心の間で伝わるエネルギーそのものを形成作用とでも思っていただけたらと思います。起こる波、水流(イメージ)は、石の大きさや重さ、水面に突入する角度などで異なってきます。
例えば目の前を時速100kmの蚊が通り過ぎるのと、時速100kmの隕石が通り過ぎるのとでは、驚きの度合いは異なるでしょう。そして、海そのものに意識があるとしたら、「あ、石だ、波だ・・・」と識別するのです。

この一連の流れをしっかり理解し、覚えていただけたらと思うのですが、中でもこの印象作用は、カルマと関係があり、心の働きの中では最も重要なものと位置付けられております。ですので、潜在意識やチャクラそのものの解説に入る前に、印象作用を含めた仏教心理学について理解をして頂けたら思います。

仏教哲学では、外界の対象物を「色」、感受作用を「受」、イメージ作用を「想」、印象作用(形成作用)を「行」、識別作用を「識」と呼びます。これらは般若心経でも出てくる単語で、「照見五蘊皆空」「色受想行識」などの一説で知られております。興味がありましたら、般若心経の日本語訳をチェックされてみるのもいいと思います。

 

まとめ

・サーンキャ哲学、仏教心理学の基礎である「五蘊」を理解しよう。
・外界の対象物→感受作用→印象作用→イメージ作用→識別作用の順で展開する。
・印象が要!

ありがとうございました。

 

編集後記

今回は、瞑想で大切な仏教心理学の3ステップについて書かせていただきました。実戦的な解説に入ってきましたが、潜在意識、無意識や、チャクラ本体などのエネルギーの説明の前に理解しておかなくてはならないことがたくさんあります。これらを飛ばさずしっかり理解していくことで、心理学や、哲学、瞑想、チャクラについても横断的にスムーズに、より深く理解していくことができると思います。

Chisen_D